米国の元財務長官ローレンス・サマーズ氏は5日、トランプ次期大統領が提案する政府によるビットコイン保有構想を「非現実的」と批判した。
サマーズ氏はブルームバーグテレビの番組「ウォールストリート・ウィーク」に出演し、同構想が国家財政の健全性よりも選挙資金提供者への配慮を優先しているとの見方を示した。トランプ氏の提案では、米政府が押収資産として保有する約20万ビットコインの保有を継続する方針を掲げている。
ビットコインによる国家債務削減案の実現性
構想支持者らは、ビットコイン価格の将来的な上昇により国家債務の削減に寄与する可能性を主張する。トランプ氏は証券取引委員会(SEC)委員長に暗号資産(仮想通貨)支持者のポール・アトキンス氏を指名し、仮想通貨に前向きな姿勢を示している。
ハーバード大学教授も務めるサマーズ氏は、仮想通貨業界への規制が過度になる場合もあると指摘。金融イノベーションの必要性は認めつつも、国家によるビットコイン保有の合理性には疑問を投げかけた。同氏は「政府が何らかの価格を支援するとして、なぜ収益を生まないビットコインの在庫を蓄積する選択をするのか」と述べた。
財政支出削減を巡る課題
新政権の課題として、政府効率化諮問委員会の共同議長に就任予定のイーロン・マスク氏が掲げる2兆ドル(約29兆円)の連邦支出削減案も注目を集める。サマーズ氏は、この金額が連邦政府の給与支出総額を上回り、国防費や高齢者支援など削減が政治的に困難な分野が大半を占めると指摘した。
先進国共通の財政課題
サマーズ氏は米国の選択肢として、国民が期待する社会保障の削減か増税かの決断が必要と述べ、自身は後者を支持する立場を示した。高齢化と医療費増大により社会保障費負担が増加する中、フランスや韓国、ドイツでも予算を巡る政治的混乱が発生している。
財政調整の必要性を国民に明確に伝えることの重要性も指摘された。「指導者たちは支出削減や増税の必要性を国民に納得させることができていない。それが対立の根本的な原因だ」とサマーズ氏は強調した。
ドイツの事例では7月に4万9858ビットコインを1ビットコイン5万3000ドル(約776万円)で売却したが、最近の10万4000ドル(約152万円)への価格上昇により約25億4000万ドル(約3710億円)の機会損失が発生した。このような事例は、国家によるビットコイン保有の判断が長期的な財政に与える影響の大きさを示している。