自動運転ソフトウェアの開発を主導するティアフォーと、東京大学発のAI研究所である松尾研究所は17日、自動運転2.0の実現に向けた生成AI開発プロジェクトを開始した。
このプロジェクトは、自動運転レベル4の運行設計領域(ODD)を大幅に拡大することを目指している。
生成AIによる大規模世界モデルの構築
プロジェクトの中核となるのは、大量の走行データを学習して実世界の運転行動の常識を模倣できる大規模世界モデルの構築だ。
このモデルにより、事前に定義したルールが適用できない状況でも、周囲の環境情報から適切な運転行動を生成可能なEnd-to-End AIの実現を目指す。
さらに、最新の生成AIと従来のロボット工学を組み合わせたハイブリッドなフレームワークを設計する。これにより、商用車から自家用車まで様々な車種に対応し、高速道路から市街地まで幅広い環境で使用できる自動運転ソフトウェアの開発を進める。
オープンソース化による自動運転の民主化
本プロジェクトの特筆すべき点は、開発成果をすべてオープンソースとして公開する予定だ。
これは、ティアフォーが掲げる「自動運転の民主化」というビジョンに沿ったものである。ティアフォーは、世界初のオープンソース自動運転ソフトウェア「Autoware」の開発を主導する企業として知られている。
ティアフォーの加藤真平CEOは以下のようにコメントしている。
「生成AIの進化は目覚ましく、自動運転2.0を実現するための重要な鍵となっています。AI開発を強みとする松尾研究所と自動運転技術開発を強みとする当社の強力なタッグにより、ロボットタクシーを始めとした自動運転の社会実装をより加速することができると信じています」
世界モデルが拓く自動運転の未来
松尾研究所は、東京大学大学院工学系研究科松尾・岩澤研究室の研究成果の開発・実装を担う組織だ。
同研究所の技術顧問である松尾豊氏は、世界モデルの重要性を強調する。「世界モデルは、人間の外界に関する知的能力をモデル化した技術であり、複雑な実環境下での安全な移動を実現する自動運転に欠かせない要素といえます」と述べている。
このプロジェクトでは、ニューラルシミュレータによるEnd-to-End AIの学習・評価、協調的機械学習基盤(Co-MLOps)を用いた大規模データによる学習、Cars That Think and Talk(CT3)をインターフェースとした動作説明など、複数のAIプロジェクトを組み合わせることで、さらなる規模拡大を目指している。
ティアフォーは、2025年中に次世代の自動運転2.0アーキテクチャを「Autoware」に組み込み、公開する予定だ。この取り組みにより、自動運転技術の発展が加速し、より安全で効率的な交通社会の実現に一歩近づくことが期待される。