人工知能(AI)スタートアップのSafe Superintelligence(SSI)は4日、安全なスーパーインテリジェンスAIシステムの開発を目指し、10億ドル(約1470億円)の資金を調達した。
SSIは、ChatGPTなどを手掛けるOpenAIの元チーフサイエンティストであるイリヤ・サツケヴァー氏が共同創業した企業だ。
巨額資金調達の背景
SSIは、サツケヴァー氏に加え、アップルでAI部門を率いたダニエル・グロス氏、OpenAIの元従業員ダニエル・レヴィ氏が3か月前に設立した。ロイター通信によると、この資金調達により同社の企業価値は50億ドル(約7350億円)に達したという。
現在、SSIの従業員数はわずか10名。3人の共同創業者を含むこの小規模な組織が、スタートアップとしては異例の大型資金調達に成功した背景には、創業メンバーの実績と将来性への期待がある。
特にサツケヴァー氏は、OpenAIの成功の中核を担った人物として知られている。
Valuations for AI startups are continuing to skyrocket. This time, OpenAI co-founder Ilya Sutskever raising a whopping $1 billion as a seed round, with just around 10 employees and nowhere close to having a product. It's the epitome of the breakneck genAI race for top talent pic.twitter.com/FGr11ovJnv
— TechCheck (@CNBCTechCheck) September 5, 2024
資金の使途と今後の展望
調達した資金は、主に2つの目的で使用される予定だ。1つは、トップクラスのAI人材の獲得。もう1つは、計算能力の増強だ。
サツケヵァー氏がチーフサイエンティスト、レヴィ氏が主任科学者を務め、グロス氏が計算能力の管理と資金調達を担当する。
グロス氏はインタビューで次のように述べている。
「安全なスーパーインテリジェンスへの直接的なアプローチを目指し、特に市場投入前の2年間は研究開発に集中したいと考えています。そのためにも、我々のミッションを理解し、尊重し、サポートしてくれる投資家に囲まれることが重要です」
投資家には、アンドリーセン・ホロウィッツやセコイア・キャピタル、DST Global、SV Angelなどの著名なベンチャーキャピタルが名を連ねる。
AI業界では、高騰するコストに見合う収益を上げられるかという懸念が広がっているにもかかわらず、これらの投資家はSSIの将来性に賭けたことになる。
OpenAI退社の経緯と新たな挑戦
サツケヴァー氏は、自身が共同創業したOpenAIを今年5月に退社した。その背景には、サム・アルトマンCEOの解任を巡る騒動があった。
サツケヴァー氏は当初、アルトマン氏の解任に賛成票を投じたが、その決定が覆されたことで自身が取締役から外され、最終的に会社を去ることとなった。
SSIは、文化的に適合する人材の採用を重視している。グロス氏は、「良い性格」の候補者を見極めるために何時間もかけて審査を行っていると述べた。同社が求めているのは、AIのブームに惑わされることなく、仕事そのものに興味を持つ人材だという。
人工知能(AI)の急速な発展が続く中、SSIの挑戦は業界に新たな風を吹き込む可能性がある。安全性を重視したスーパーインテリジェンスの開発が、今後のAI技術の方向性にどのような影響を与えるか、注目が集まっている。