起業家のイーロン・マスク氏は22日、今後10年以内に数百万人に自社Neuralink社の脳チップを植え込むという野心的な目標を明らかにした。この発表は、Neuralink社が2人目の参加者への植え込み手術の成功を報告した直後に行われた。
Neuralinkの革新的な脳インターフェース技術
2016年にイーロン・マスクによって設立されたNeuralink社は、脳とコンピューターを直接つなぐインターフェース技術の開発に取り組んでいる。この技術は、麻痺患者が思考だけでデジタルデバイスを操作できるよう設計されている。
Neuralinkの脳チップは、64本の微細な糸を脳に挿入することで機能する。各糸には複数の電極が含まれており、脳とチップをつなぐ役割を果たす。
チップはアプリと連携し、患者は思考だけでデバイスを制御できるようになる。この革新的な技術は、医療分野に大きな変革をもたらす可能性を秘めている。
2人目の参加者への植え込みと技術的進歩
7月に行われた2人目の参加者アレックス氏への植え込み手術は「順調に進んだ」とNeuralink社は報告している。アレックス氏は手術翌日に退院し、現在も経過観察中だ。
1人目の参加者ノーランド・アーボー氏の植え込み後、64本の糸のうち多くが収縮し、チップの電極の15%しか機能しないという問題が発生した。
Neuralink社はこの問題に迅速に対応し、2人目の参加者への植え込みでは、手術中の脳の動きを抑え、インプラントと脳表面の隙間を減らすなどの改良を加えた。
その結果、「糸の収縮は観察されていない」とNeuralink社は報告している。この技術的進歩は、脳チップの安定性と信頼性向上につながる重要な一歩だと言える。
イーロン・マスクの描く未来像
イーロン・マスクは自身のXプラットフォームで、Neuralink技術の普及に関する野心的なビジョンを次のように述べた。
「うまくいけば、数年以内に数百人、5年以内に数万人、10年以内に数百万人がNeuralink(脳チップ)を装着することになるだろう」
Update about the second Neuralink device in a human.
If all goes well, there will be hundreds of people with Neuralinks within a few years, maybe tens of thousands within 5 years, millions within 10 years, … https://t.co/opy1xj5JgF
— Elon Musk (@elonmusk) August 22, 2024
このビジョンが実現すれば、神経科学と人工知能(AI)の融合が急速に進み、人間の認知能力を大きく拡張する可能性がある。しかし、同時に倫理的な懸念や長期的な安全性の問題も指摘されており、慎重な議論と検討が必要だ。
Neuralink技術がもたらす可能性と課題
Neuralink社の技術は、麻痺患者の生活の質を劇的に向上させる可能性を秘めている。思考だけでデバイスを操作できるようになれば、コミュニケーションや日常生活の自立度が大きく改善されるだろう。
一方で、脳に直接チップを植え込む技術には、プライバシーやセキュリティの問題、人間の本質的な変容に関する哲学的な問いなど、多くの課題も存在する。これらの課題に対しては、医学界、倫理学者、政策立案者など、幅広い分野の専門家による慎重な検討が不可欠だ。
Neuralink社の技術開発は今後も続き、より多くの患者への応用が期待される。同時に、社会や倫理への影響についても注視し、技術の進歩と人間の尊厳のバランスを保つことが重要になるだろう。人類の未来を左右する可能性を秘めたこの技術の発展に、世界中が注目している。