インスタグラムなどを運営する、米メタは29日、同社初となる単独所有の世界一周海底ケーブル建設計画を進めていることが明らかになった。投資総額は100億ドル(約1.5兆円)規模となる見通しだ。
世界最大規模の通信インフラ構想
計画では全長4万キロメートル以上の光ファイバーケーブルを敷設。米国東海岸からインドまでを南アフリカ経由で結び、さらにインドから豪州を経て米国西海岸へと接続する「W」型の経路を予定している。同社は2025年初頭に詳細を公表する方針だ。
同社の通信量は固定回線で世界の10%、モバイル通信で22%を占めており、AIによる利用増加も見込まれる。自社専用の通信インフラを確保することで サービス品質の向上を目指す。
地政学リスクを回避する戦略的ルート
計画されている経路は紅海や南シナ海、エジプト、マルセイユ、マラッカ海峡、シンガポールなど地政学的リスクの高い地域を意図的に回避。近年、紅海ではイラン支援のフーシ派による攻撃で海底ケーブルが損傷するなど、リスクが顕在化している。
単独所有のケーブルを安全な経路で保有することで、通信インフラの安定性確保を図る。米連邦通信委員会(FCC)が11月に国家安全保障の観点から海底ケーブルの認可基準見直しを発表したことも、同社の判断に影響を与えた可能性がある。
インドでのAI展開を見据えた構想か
インドは同社にとってフェイスブック(3億7500万人)、インスタグラム(3億6300万人)、ワッツアップ(5億3600万人)の最大市場。業界専門家は インドの低コストな計算処理能力を活用したAIモデルのトレーニング拠点としての可能性も指摘する。
建設には数年を要する見通しだ。ケーブル敷設船の供給が限られており、グーグルなど他社の予約が入っているため、段階的な建設となる可能性が高い。メタの今回の計画は、テクノロジー企業による通信インフラの自社保有という新たな潮流を象徴している。
サービス品質の向上と地政学リスクの軽減を目指す同社の戦略は、今後のグローバルな通信インフラの在り方に大きな影響を与えるだろう。