ハーバード医科大学の研究チームは4日、19種類のがんを約94%の精度で診断できる人工知能(AI)システム「CHIEF」(Clinical Histopathology Imaging Evaluation Foundation)を開発した。
研究チームによると、CHIEFは他のAIモデルと比較して、より幅広いタスクを実行できる柔軟性を持つという。
CHIEFの特徴と性能
CHIEFの開発を主導したハーバード医科大学のクン・シン・ユー助教授は、「ChatGPTのような、がん評価に関する幅広いタスクを実行できる柔軟で多用途なAIプラットフォームを作ることが我々の野望だった」と語った。
CHIEFは、がんの診断だけでなく、患者の治療反応を予測する能力も持つ。さらに、以下のような多様なタスクを高い精度で実行できる。
- がん細胞の検出
- 腫瘍の起源の特定
- 患者の予後予測
- DNAパターンの識別
研究チームによると、CHIEFは比較可能な他のAIシステムと比べて、これらのタスクで最大36%の性能向上を示したという。
AIによるがん診断の未来
CHIEFの開発は、AIを活用した臨床判断支援ツールの設計において大きな前進を示している。このモデルは、腫瘍の微小環境の特徴を使用して患者の治療反応を予測し、個別化された治療法の選択を支援する可能性がある。
特筆すべきは、CHIEFが生検や外科的切除によって得られた細胞サンプルに対して同等の精度で機能することだ。
この適応性により、CHIEFは様々な臨床環境で使用可能となり、現在のモデルの限界を超える重要な一歩となる。
今後の展望と課題
研究チームは、CHIEFの性能をさらに向上させ、その機能を拡張するための計画を立てている。具体的には以下のような取り組みを予定している。
- 希少疾患や非がん性疾患の画像でさらなるトレーニングを行う
- 前がん細胞のサンプルを含める
- より多くの分子データを導入し、異なる攻撃性レベルのがんを識別する能力を向上させる
- 標準治療に加え、新しいがん治療法の効果と副作用を予測する能力を訓練する
これらの取り組みにより、CHIEFはより包括的ながん診断・予測ツールへと進化することが期待される。
ただし、AIの医療応用には慎重な検証と倫理的な配慮が必要不可欠だ。患者のプライバシー保護や、AIの判断に対する人間の医師によるチェック体制の確立など、解決すべき課題も多い。
CHIEFの開発は、AIががん診断と治療の未来を変える可能性を示している。しかし、その実用化には更なる研究と検証が必要であり、医療現場での実際の運用までには時間がかかるだろう。今後の研究の進展に注目が集まる。