富士通は30日、カナダの人工知能(AI)企業Cohereと共同開発した世界最高の日本語性能を持つ企業向け大規模言語モデル「Takane(高嶺)」の提供を開始した。このAIは、セキュアなプライベート環境での利用が可能で、企業の業務変革を支援する。
世界最高の日本語能力を実現
「Takane」は、日本語言語理解ベンチマークJGLUEにおいて世界最高記録を達成している。日本語特有の難しさ、例えば文字種の混在や主語の省略、敬語表現などに対応し、高い精度で出力を行う。
この対応で、行政や金融、医療、法曹など、言葉の間違いが重大な問題を引き起こす可能性のある分野での活用が期待される。
セキュアな環境でのAI活用
「Takane」の特長は、セキュアなプライベート環境で利用できる点だ。これにより、金融業界や製造業、安全保障分野など、データ漏洩の懸念から従来のAI導入が難しかった業務でも安心して活用できるようになる。
さらに、企業独自のデータを用いたファインチューニングやカスタマイズにより、各社の業務に特化したAIへと進化させることが可能だ。
Cohereの技術力が「Takane」を支える
「Takane」の基盤となっているのは、Cohereが開発した「Command R+」モデルだ。Cohereは2019年に設立されたカナダの企業で、企業向けAIソリューションの開発に特化している。
同社のCommand Rモデルは、最大128,000トークンのコンテキスト長をサポートし、多言語でのインタラクションが可能な高度な言語モデルだ。富士通は、このCommand R+に日本語強化のための追加学習とファインチューニングを行い、「Takane」を開発した。
富士通のヴィヴェック マハジャン執行役員副社長CTOは、「プライベート環境の利用に適した本モデルが、セキュアな環境が必須な業種のお客様の生成AI活用に貢献できることを期待しています」とコメントしている。
企業のビジネス変革を支援
富士通は「Takane」を「Fujitsu Kozuchi(Generative AI)」のラインナップに加え、「Fujitsu Data Intelligence PaaS」を通じて提供する。
既に複数の大手企業が活用を検討しており、みずほフィナンシャルグループはシステム開発の設計プロセスへの適用を予定している。三菱電機やデロイト トーマツ コンサルティング、AI開発のRUTILEAなども導入に前向きだ。
金融、製造、コンサルティング、AIサービスなど、幅広い業界での活用が期待される「Takane」。セキュリティと高度な日本語能力を両立したこのAIが、日本企業のデジタル変革にどのようなインパクトを与えるか、今後の展開が注目される。