2024年1月、ビットコイン現物ETFがアメリカの証券取引所に上場したことをきっかけに、仮想通貨への社会的信用が高まり、世界中の機関投資家の莫大な投資資金が仮想通貨市場へ流入する可能性が増してきました。また、2024年7月にはイーサリアム現物ETFの取引もアメリカの3つの証券取引所にて開始され、仮想通貨ETF市場への注目がますます集まっています。
本記事では、「ビットコインETFに興味があるが詳しく意味を知らない…」「ビットコインETFを買うメリットがわからない…」「ビットコインETFがどこで買えるか知りたい…」といった疑問をお持ちの方のために、ビットコインETFの主な特徴や日本での取り扱い状況、今後の見通しなどを解説しています。
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ビットコインETFとは
Web3.0時代の新たな投資商品であるビットコインETFの特徴を知りたい方のために、基本的な用語から詳しく解説していきます。
そもそもETFとは?
ETFとは「Exchange Traded Funds、上場投資信託」の略称です。投資信託は多数の投資家から集めた資金を一つにまとめて、投資の専門家である運用会社が国内外の株式・債券・コモディティに分散投資を行い、その運用成果を投資家に分配する金融商品を指します。一般的に以下のような何らかの指数に連動して運用されることが多いです。
- 日本の代表的な株価指数である「日経平均株価」
- アメリカの代表的な株価指数である「S&P500」
- 日本や米国の債券指数
- 金銀プラチナ等のコモディティ指数
いずれにしても、ETFは数多くの銘柄で構成されているため、ETFを持つことで複数銘柄に分散投資することが可能とされています。
仮想通貨ETFとビットコインETFの違い
近年では暗号資産(仮想通貨)の普及に伴い、「仮想通貨ETF」や「ビットコインETF」も登場し、投資家の注目を集めています。
仮想通貨ETFとビットコインETFの違いは、指数に連動するETFの中身がどんな銘柄で構成されているかということです。
- 仮想通貨ETF:ビットコイン(BTC)、イーサリアム(ETH)、リップル(XRP)、ライトコイン(LTC)等の複数の仮想通貨で構成される価格指数に連動する
- ビットコインETF:ビットコインだけの価格に連動する
ビットコイン現物ETFとビットコイン先物ETFの違い
ビットコインETFとは現物ETFと先物ETFの2種類があり、以下に違いを挙げておきます。
ビットコイン現物ETF | ビットコイン先物ETF | |
特徴 | 保有者が売却するまでは実際にビットコインを保有するのと同等の意義を持つ | 決済期日までは実際にビットコインを保有するのと同等の意義を持つ |
取引方法 | 時価に応じて売買を行う(いわゆる通常の売買取引) | あらかじめ決められた決済期日までにビットコイン(BTC)の価格が上がるか下がるかを予測する |
利益の決まり方 | 購入時と売却時の差額によって、利益を得たり損失を被る | 決済期日の価格によって利益を得たり損失を被る |
「ビットコイン」と「ビットコインETF」の違い
ビットコインとビットコインETFの主な違いとなるのは「購入方法」「取引時間」「税金」です。ビットコインとビットコインETFの主な違いを一覧でご紹介します。
ビットコイン | ビットコインETF | |
購入方法 | 仮想通貨取引所を通じて購入する | 証券会社の売買注文を通じて購入する |
取引時間 | 仮想通貨取引所で24時間365日売買取引できる | 基本的に株式市場が開いている日中の時間帯に限定される |
税金 | 雑所得に区分され総合課税となるため、最大で約55%の税率が課せられる | 株式や投資信託の所得と見なされるため、20.315%(所得税15%、住民税5%、復興特別所得税0.315%)の税率が課せられる |
ビットコインを購入するためには、仮想通貨取引所の口座を開設する必要があります。
ビットコインETFのメリット
ビットコインETFを持つことで、次のメリットを得ることができます。
- インフレ対策となる
- 税制面の優遇を受けることができる
- 仮想通貨口座開設や仮想通貨ウォレットが不要
- 少ない投資額でハイリターンが期待できる
- 買い相場、売り相場の両方での利益が期待できる
では、メリットについて一つずつ確認していきましょう。
①インフレ対策となる
昨今、世界中でインフレが進行中であり、日本でもさまざまな商品・サービスの価格が上昇しています。インフレが進むと、各国政府が発行する米ドル、ユーロ、日本円など法定通貨の価値が実質的に下がります。
急激なインフレに備えるためには、通説では金(ゴールド)が有効とされています。なぜなら、金は供給量には限界があり、希少性が保たれ、価値を保ちやすいためです。
その金の代替商品として注目されているのが、ビットコイン(BTC)です。ビットコインはビットコイン半減期などの仕組みにより発行される総量が2100万枚と定められている上に発行ペースも定められており、金(ゴールド)と同じようにインフレ耐性を持つように設計されているためです。
2033年までにビットコイン発行枚数の99%が発行される予定で、以降は発行されるペースが減少する見込みです。このような理由から、過去に1000倍になった仮想通貨であるビットコインは法定通貨と違い、上限以上は発行されず、発行以来通貨価値は高まり続けています。
ビットコインETFは基本的にビットコインの価格に連動しているため、ビットコインETFを保有することは現物のビットコイン(BTC)を保有することとほぼ同義です。ビットコインを持つことはインフレ対策において非常に有用と言えるでしょう。
②税制面の優遇を受けることができる
株式やETF、仮想通貨取引で得た利益は課税の対象となり、対象商品によって課税率が異なります。ビットコイン(BTC)の場合、売買で得た利益額にもよりますが、利益額に対し最大55%の税金が課税されます。
一方でビットコインETFが日本で買えるようになった場合は、利益額に対し一律20.315%の税金がかかり、その差は最大でおよそ35%となり、税金の負担がかなり少なくなります。
また、納税に際して必要となる確定申告の内容について、ビットコイン(BTC)は取引者個人で管理し対応する必要があるのに対し、ビットコインETFの場合は証券会社が作成するため、比較的手続きが簡単で手間がかかりません。
③仮想通貨口座開設や仮想通貨ウォレットが不要
ビットコインETFは証券取引所に上場している金融商品であるため、仮想通貨を保有するために必要な仮想通貨取引所の口座開設や、仮想通貨ウォレットが不要です。
証券取引所にて株式と同じような感覚でビットコインETFを購入できるという点で、仮想通貨取引に不慣れなユーザーでも所有しやすいと言えるでしょう。
④少ない投資額でハイリターンが期待できる
ビットコインETFは信用取引が可能であるため、場合によってはビットコイン(BTC)で売買取引を行うことによって得られる利益よりも、大きいリターンを得ることができます。
信用取引とは、証券会社に預けた取引資金である保証金を担保として、証券会社からお金を借りて株式を買ったり、株券を借りてそれを売ったりする取引のことで、預けた保証金の約3.3倍までの取引を行うことができます(レバレッジ取引)。つまり、預け入れた金額以上の取引を行うことで大きな利益を得る可能性があります。
⑤買い相場、売り相場の両方での利益が期待できる
ビットコインの取引では、購入時より価格が下がった場合は利益を得ることはできませんが、ビットコインETFでは購入時より価格が下がることで利益を得ることが可能です。
ETF取引においては、購入した資産の価格が将来的に下がると予想し、実際に購入時より価格が下がった際に決済して利益を得ることができる「売り注文」と呼ばれる、信用取引ならではの取引方法を行う事が出来るためです。
ビットコイン現物取引で一般的に行われる「買い注文」→「売り決済」だけでなく、ETFならではの「売り注文」→「買い決済」ができるため、相場の下落局面でも収益機会を得ることが可能です。
ビットコインETFのデメリット
デメリットとして考えられるのは以下のケースです。
- 取引できる時間が限られているため、取引時間外に損失を被る可能性がある
- レバレッジ取引により損失額が大きくなる場合がある
- 管理手数料がかかる
デメリットについても、一つずつ確認していきましょう。
①取引できる時間が限られているため、取引時間外に損失を被る可能性がある
24時間365日取引できるビットコイン(BTC)と違い、ビットコインETFは取引できる時間が証券市場が開いている平日日中に限られています。
仮想通貨は株式や債券と比べて値動きが大きく、一日に十数%価格が動く機会も珍しくはありません。取引時間外に、自分が持っているポジション(建玉)と逆方向に価格が大きく動いてしまった場合、すぐに損切り(決済時の価格で損失を確定させること)出来ないのはリスキーと言えるでしょう。
②レバレッジ取引により損失額が大きくなる場合がある
レバレッジ取引を行うことはメリットでもあり、デメリットでもあります。預け入れた金額以上の取引を行うことにより大きいリターンを得る可能性があるとともに、大きな損失を被る可能性があるためです。
特に投資初心者においては、信用取引はハイリスク・ハイリターンであることを理解し、最大限までレバレッジをかけない、保証金は出来るだけ多めに入金して無理のない範囲でビットコインETFを購入するといった注意を払う必要があります。
③管理手数料がかかる
ビットコインETFはビットコインと異なり、資産を自分で管理せずに証券会社に管理を任せるため、手間賃のような形で管理手数料を支払う必要があります。さらに、ビットコインETFの売買や配当受け取りの際にもそれぞれ手数料を支払う必要があるため、ビットコイン保有には存在しない諸々の手数料がかかることに気を付けましょう。
また、上記の手数料は証券会社によって異なるため、どの程度手数料を支払うのか、利用する予定の証券会社のHP等で把握しておく必要があります。
ビットコインETF/仮想通貨ETFの買い方
以下でビットコインETFの買い方を説明していきます。ビットコインETFの買い方は一般的な仮想通貨の買い方とは異なります。
ビットコインETFの買い方
本記事執筆中の2024年10月時点、日本国内の取引所にて仮想通貨ETF/ビットコインETFを買うことはできません。証券会社がビットコインETFを取り扱うためには、金融庁の認可が必要であるためです。日本国内においては、仮想通貨は現時点ではETFや投資信託に組入れ可能な「特定資産」ではありません(投信法施行令3条)。
また、外国のETFであっても、楽天証券やSBI証券等の日本国内の証券会社が、日本国内の顧客から行われる外国のETFの注文を取り次ぐためには、その外国のETFに関する投信法上の届出が金融庁に対して行われる必要があります(投信法施行令24条・投信法58条)。
日本国内の大手証券会社である楽天証券やSBI証券はビットコインETFをまだ取り扱っておらず、日本国内居住者はビットコインETFを買うことはできません。
仮想通貨ETFの買い方
ビットコインETF以外の仮想通貨ETFについても、ビットコインETFと同様に日本国内での販売は開始しておりません。しかしながら、仮想通貨ETFは構成銘柄の中に複数のおすすめ仮想通貨を組み合わせたETFであるため、ETF構成銘柄と同じ仮想通貨に分散投資することでETFと近似したパフォーマンスの投資運用をする事は可能です。
例えば、アメリカの暗号資産運用企業Bitwise(ビットワイズ)は「Bitwise 10 Crypto Index Fund」と呼ばれる仮想通貨ETFを顧客に提供しており、ビットコイン(BTC)を始めとして、イーサリアム(ETH)、ソラナ(SOL)等のアルトコイン計10銘柄で構成されています。
Bitwise公式HPでは仮想通貨の構成比率及び構成銘柄を記載しています。ページを参考にしながら仮想通貨取引所でビットコインやイーサリアムを購入し分散投資を行うことも可能です。ひと手間かかりますが仮想通貨ETFへの投資を再現できます。
ビットコインETFは日本でいつ買えるようになる?
結論としては、ビットコインETFの日本国内における販売時期については不明です。しかしながら、仮想通貨ETFサービス開始の動きは徐々に始まりつつあります。ビットコインETF解禁に向けた動きについて、下記の三者の立場から見ていきましょう。
- 暗号資産交換業者
- 与党
- 政府
暗号資産交換業者
アメリカでのビットコインETF提供開始を踏まえ、日本国内の暗号資産交換業者の間でも、仮想通貨ETF提供を目指す動きが徐々に活発化してきているようです。国内仮想通貨取引所大手のビットフライヤーは、2024年6月に仮想通貨ETFに関する金融商品を展開していくと表明しています。
国内大手証券会社SBIホールディングスも、2024年7月にアメリカでビットコインETFを提供している資産運用会社フランクリン・テンプルトンと共同で運用会社を設立すると発表しました。仮想通貨ETFはあくまでも「新たな金融商品の開発・提供候補の一つ」にすぎないとしつつも、資産の運用先の一つとして有効であると将来性や成長性を高く評価しています。
日本国内の暗号資産業界団体の日本暗号資産ビジネス協会(JCBA)などは、2024年7月、政府に対し仮想通貨に関する税制改正要望書を提出しました。最大税率55%のまま仮想通貨ETFが承認されれば税制上の不均衡が生じるため、暗号資産の取引で得た利益も株式や投資信託の所得と同様に扱われ、申告分離課税の対象(利益の最大20%)とすることを要望しました。
与党
自民党のデジタル社会推進本部が2024年4月に公開した提言書「web3ホワイトペーパー 2024」で、暗号資産を組成するETFを許容しないことが適切な政策であるのかが問題となる旨を明記しました。
その上で、金融庁に法改正を働き掛けるよう促しており、与党としては仮想通貨ETF解禁に向けて動きを徐々に見せています。
政府
これに対し金融庁は金融機関などへの監督指針で、暗号資産について「テロ資金供与やマネーロンダリングに利用されるリスク」「裏付けとなる資産がない」「価格の変動が大きい」などといった理由から、不正流出や犯罪組織による悪用などを危惧しています。
なお、鈴木俊一前金融相は投資信託について、国民の長期的・安定的な資産形成の手段として特別の制度的位置付けを与えられたものと説明した上で、「暗号資産がこうした趣旨に沿った資産であるか否かについて慎重に検討する必要がある」と述べております。
政府としては暗号資産を組成するETFを許容するための法改正について慎重な姿勢を崩していません。
世界各国の仮想通貨ETF解禁の潮流に乗り、仮想通貨ETFの新たなサービス展開を始めたい民間業者および後押しをする与党、それに対し慎重な態度を貫く政府との鬩ぎあっているため、ビットコインETFをいつ買えるかはまだ不透明です。
ビットコインETFの今後の展望
ビットコインETFの今後の展望について、以下の3つの観点から解説していきます。
- 仮想通貨に対する社会的信用が高まる
- 機関投資家による投資資金が流入する
- 流動性が増し取引が活発化する
仮想通貨に対する社会的信用が高まる
SEC(米証券取引委員会)が、2024年1月に初めてビットコイン現物ETFを承認してアメリカの証券取引所に上場したことで、ビットコイン(BTC)は社会的に信用される資産だとみなされるようになりました。
これはビットコインが「透明性の高い決済ネットワーク」「暗号技術に裏付けされたセキュリティ性」等の特性をもつ適正な金融商品だとして、SECの厳格な審査にパスしたことを意味します。
上記の通り金融商品が証券取引所に上場するためは、投資商品として一定の基準を満たす必要があり、ビットコインETFがSECの承認を得たことがきっかけで、ビットコインの将来性に対して社会的な信用が高まると予想されます。
機関投資家による投資資金が流入する
機関投資家とは、顧客から集めた資金を運用・管理する法人や団体を指し、代表的な例としては、生命保険会社、損害保険会社、投資顧問会社、信託銀行、年金基金などが挙げられます。機関投資家は個人投資家に比べ大きな資産を持つため、市場において価格を大きく動かす力があるとされます。
ただし、機関投資家は顧客から預かった資産を安全に運用する義務があり、万が一機関投資家が破綻した場合に顧客から集めた資産を顧客に返還できないような、投資家保護が十分でない金融商品には投資できず、その中には仮想通貨も含まれています。
機関投資家にとってビットコイン(BTC)の現物は投資対象ではありませんが、ビットコインETFが証券取引所に上場した場合は、投資家保護が十分である金融商品として投資対象に加える事ができます。その結果として、機関投資家の莫大な資金がビットコインETFに流入して、ビットコインの時価総額はより増大すると見込まれるため、価格上昇が期待されます。
流動性が増し取引が活発化する
ビットコインETFは信用取引ができるため、投資家は将来的にビットコインETFの価格が下がると判断した場合、現在価格からの売り注文を出し、売り建玉を保有することができます。このような理由から価格が上昇する買い相場のみならず、価格下落の売り相場でも注文が成立しやすくなります。
また、現物のビットコインの取引と違い、ビットコインETFは「レバレッジ取引」と呼ばれる元手以上の取引金額でトレードを行う方法が可能です。レバレッジ取引を行うことで、少ない投資金額でもハイリターンを狙える可能性があるため、資金の少ない個人投資家の参入もより多くなると見込まれます。
上記の理由からビットコインの取引がこれまで以上に活発になると予想されます。ビットコイン取引市場に高い流動性が生まれることで売買注文成立までの約定時間が短くなり、トレーダーが希望する価格での売買が成立しやすくなるため、より多くの投資金額が流入することでしょう。
ビットコインETFのまとめ
ビットコインETFとはビットコインの価格に連動する投資信託の一種であり、2024年1月に、アメリカにて世界で初めてビットコイン(BTC)の現物価格に連動する「ビットコイン現物ETF」の取引が開始されました。
2024年7月にはイーサリアムETFも開始されたことにより仮想通貨への社会的信用が高まるとみられます。イーサリアムの今後を考えると、機関投資家により仮想通貨市場へ大きな資金が流入をすると予想されます。
ビットコインETFを購入する際は、仮想通貨取引所の口座開設や仮想通貨ウォレットが不要で、仮想通貨投資初心者でも手間をかけずに証券会社を通じて簡単に購入することができます。
ただし、日本国内においては、SBI証券や楽天証券などの大手証券会社のみならずどの証券会社もビットコインETFを取り扱っていないため、いまだ購入することはできません。しかしながら、日本国内でもビットコインETFの提供開始に向けた動きはあるようで、今後のサービス提供に向けた期待が高まります。
なお、当メディアでは、ビットコインの情報以外にもミームコイン情報にも触れています。柴犬コインなどの将来性のあるコインにも注目です。