オーストラリア上院は28日、16歳未満の若者のソーシャルメディア利用を禁止する法案を可決した。同法案は世界で最も厳格なSNS規制として注目を集めている。
規制の具体的内容
新法は今後12カ月以内に施行される見通しで、違反したSNS企業には最大5000万豪ドル(約3億2500万円)の罰金が科される。アンソニー・アルバニージ首相は「若者をソーシャルメディアの害から守る必要がある」と法案の意義を強調している。同法案は今後下院での修正案の承認を経て法制化される。
規制対象となるプラットフォームは今後、通信大臣がeSafety Commissioner(インターネット規制当局)の助言を受けて決定する。ゲームやメッセージングプラットフォーム、アカウント不要で閲覧可能なサイトは対象外となり、YouTubeなども規制を免れる見通しだ。
年齢確認と課題
政府は年齢確認技術を用いて規制を実施する方針で、今後数カ月間で具体的な手法を検討する。
プラットフォーム側に年齢確認プロセスの導入を義務付ける。生体認証や本人確認情報を活用する可能性があるが、デジタル研究者からは技術的な実効性や個人情報保護に関する懸念が示されている。
規制を回避するためにVPNを使用するなど、若者が制限を迂回する可能性も指摘されているが、違反した未成年者への罰則は設けられていない。
各界の反応と今後の展開
親や保護者の間では規制を支持する声が多数を占めている。一方でGoogle、Snap、Meta、TikTok、Xなどの大手プラットフォームは、法案の実効性や定義の曖昧さを批判。若者の権利擁護団体からは、SNSが果たす重要な社会的役割が軽視されているとの指摘もある。
フランスでは昨年、保護者の同意なしで15歳未満の子どものSNS利用を禁止する法律を導入したが、約半数のユーザーがVPNを使用して規制を回避している。ノルウェーはオーストラリアの規制に追随する意向を示し、イギリスも同様の規制を検討している。