米サンフランシスコの人工知能(AI)スタートアップ企業のアンソロピック(Anthropic)は19日、作家グループから著作権侵害で訴えられた。同社のチャットボット「Claude」の学習に、海賊版の書籍を無断で使用したとされている。
この訴訟は、急速に発展するAI技術と既存の著作権法制度との間に生じる新たな課題を浮き彫りにしている。
訴訟の概要と原告の主張
訴訟を起こしたのは、Andrea Bartz氏、Charles Graeber氏、Kirk Wallace Johnson氏の3名の作家だ。彼らは、フィクションおよびノンフィクション作家を代表して集団訴訟を提起している。
原告らの主張によると、Anthropicは著作権で保護された作品を大規模に盗用し、AIモデルの学習に利用したという。
訴状では、「Anthropicのモデルは、これらの作品の背後にある人間の表現と創意工夫を搾取して利益を得ようとしている」と厳しく非難している。
具体的には、Anthropicが数百万冊以上の書籍データを無許可で使用し、その市場価値は数十億ドルに上る可能性があると指摘されている。この行為は、著作者の知的財産権を侵害し、適切な報酬を得る機会を奪ったとされる。
AI企業の防御と法的解釈の争点
Anthropicを含むAI企業は、AIモデルの学習は米国著作権法の「フェアユース(公正使用)」の原則に該当すると主張している。
フェアユースは通常、教育、研究、または著作物を新しいものに変換する場合に適用される。
しかし、今回の訴訟ではこの解釈に異議を唱えている。訴状では、「人間が本から学ぶ場合、合法的なコピーを購入するか、図書館から借りる。これにより、著者や創作者に少なくともある程度の補償が提供される」と指摘。
AIシステムの学習プロセスは人間とは異なるため、フェアユースの適用は不適切だと主張している。
AI産業への影響と今後の展望
この訴訟は、AI技術の急速な発展と既存の著作権法制度との間の緊張関係を浮き彫りにしている。Anthropicに対する訴訟結果は、AI産業全体に大きな影響を与える可能性がある。
特に、AIの学習データに関する法的責任の範囲が明確になれば、AI開発企業は今後のデータ収集と利用方法を見直す必要に迫られるかもしれない。日本のAI開発企業にとっても、海外での判例は重要な指針となるだろう。