情報通信技術(ICT)は、情報の取得・処理・保存・伝達に関する技術の総称です。私たちの日常生活やビジネスに欠かせないこの分野で、人工知能(AI)による大きな変革の波が押し寄せています。
AIの急速な進化により、多くの人々が将来の労働環境への影響を懸念しています。驚くべきことに、予測によればICT関連職の92%以上が何らかの形で影響を受けるとされています。この影響は、データサイエンスからビジネス管理まで、7つの主要な職種カテゴリーに最も顕著に表れると考えられています。
この予測は、2024年4月に結成された「AI対応ICT人材コンソーシアム」によるものです。このコンソーシアムには、Google、IBM、Microsoft、Intel、Accentureなど、世界を代表するテクノロジー企業が名を連ねています。コンソーシアムはAI人材の課題に取り組むために設立され、今回、その将来の可能性と課題についての詳細なレポートを公開しました。
AIの影響を受ける7つのICT職種カテゴリー
このレポートでは、従業員が最新技術に追いつくためにスキルアップが必要になるため、「すべての職種でAIリテラシースキルが不可欠となる」と強調しています。
特に注目すべきは、「エントリーレベルの職位の90%以上が、AIの進歩により高度または中程度の変革を経験すると予想される」という点です。これらの職種カテゴリーはそれぞれ影響の程度が異なりますが、レポートでは各カテゴリーの従事者が今後AIスキルを磨く必要性を説いています。
影響を受ける7つの主要職種カテゴリーは以下の通りです。
- ビジネスと経営
- サイバーセキュリティ
- データサイエンス
- デザインとユーザーエクスペリエンス
- インフラストラクチャーと運用
- ソフトウェア開発
- テストと品質保証
AI時代のICT人材:求められるスキルアップと適応力
この結論に至るため、研究者たちはICTセクターの47の職種を詳細に分析し、上記の7つのカテゴリーに分類しました。レポートの研究者は次のように述べています。「AIは、反復作業の自動化、品質保証の徹底、大規模データセットの分析、トレンド予測のための分析、価値ある洞察の提供など、多岐にわたる分野で重要な役割を果たします。
こうした変化に対応するため、管理者と従業員の双方にとって、データを的確に解釈し、表面的な情報だけでなく、その背景にある意味を読み取る能力を養うことが不可欠です。これにより、情報に基づいた戦略的意思決定が可能になります。」
具体的な影響度を見てみると、ビジネスと経営の分野では、職種の62.5%が高度な変革の可能性があるとされています。また、デザインとユーザーエクスペリエンス関連の職種では、さらに高い割合で変革が予想されており、66.7%が高度な変革、33.3%が中程度の変革に分類されています。
これらの変化に対応し、AIの進歩に追いつくため、レポートではICT分野の人々が習得すべき重要なスキルをいくつか提案しています。それらには以下が含まれます。
- AI倫理と責任あるAI開発
- AIリテラシー(AIの基本的な理解と活用能力)
- プロンプトエンジニアリング(AIシステムへの効果的な指示の作成)
- 大規模言語モデルのアーキテクチャ理解
- アジャイル開発手法
- データ分析と解釈
- 機械学習(ML)の基礎と応用
- 検索拡張生成(RAG)技術
- TensorFlow(機械学習ライブラリ)の活用
- 自然言語処理(NLP)の理解と応用
このレポートでは、特にエントリーレベルと中堅レベルの従業員に、最もスキルアップの機会があると予想しています。これは、彼らが新しい技術に適応しやすく、キャリアの早い段階でAIスキルを身につけることで、長期的な成功を築きやすいためです。
AIの台頭は、ICT業界に大きな変革をもたらすことは間違いありません。しかし、この変化を脅威としてではなく、新たな機会として捉えることが重要です。継続的な学習と適応力を持つことで、AIとの共存を図りながら、より創造的で価値の高い仕事に従事できる可能性が広がっています。
ICT業界に携わる全ての人々にとって、今こそAIリテラシーを高め、新しいスキルを習得する絶好の機会といえるでしょう。
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